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『邦人奪還』 伊藤祐靖著
誉田哲也の、『ノーマンズランド』
門田隆将の、『疫病2020』
その流れからの選択だった。
北朝鮮でクーデターが発生したという情報から、拉致されている邦人を自衛隊の特殊部隊が救出することを目指す。
大きな筋はこれ。
ただ本書のクライマックスは、救出行動そのものの場面よりもむしろ、官邸、防衛庁幹部そして現場を率いる小隊長たちとの会議の場面だろう。
いまさら自衛隊を破棄する選択などできるわけもないのに、その存在を守る法的根拠すらもたない日本。
この国の矛盾を知るうえでもそのシーンは必読。
政敵に足元をすくわれつつある現状を逆転するために、政治ショーを目論む総理大臣と官房長官。
防衛大学校を出たというだけで防衛庁幹部に収まる、現場感覚ゼロの官僚。
そんな相手に冷静に分析報告していく特殊部隊小隊長のセリフは頼もしいと同時に哀しさを感じさせる。
はっきり言って、小説としてのストーリー展開や表現力は拙い。
しかしすべてがノンフィクションとはいえないであろう、リアルさと世界情勢を思い知らせる力強さがこの本にはある。
『あきない世傳 金と銀 淵泉篇』 高田郁著
シリーズ第9巻になる。
髙田さんは1年に2冊のペースで書き下ろされているので、第1巻はすでに4年前の作品になる。
大筋は覚えているけれど、細かい描写は忘れている箇所が多い。
ただ、みをつくし料理帖のように読み返そうとは思わないんだよなあ…
前巻の終わりから予想されていたストーリー展開で始まる。
そしてそこから割と淡々と物語は進められていく。
もともと髙田さんは、人のつながりから得られるモノを丁寧に表現する。
それが今回は次作への前振りもあろうが、より一層丁寧に描いている気がする。
果たして新型コロナウィルスで今の世の中における、希薄になりかねない人間関係を危惧されたとみるのは穿った見方だろうか。
『満月と近鉄』 前野ひろみち著
森見登美彦氏をKindleで購入しているからだろうか?
Amazonにおすすめされた本。
森見さんの京都に対して、奈良のおはなし。
まあ、奈良も好きだし、と軽い気持ちで購入した。
はっきり言って、Amazonにお礼を言いたい!
それほどに面白かった。
久しぶりに出会えて良かったと思えた本だった。
全部で4つの短編集なのだが、特に二つめの「ランボー怒りの改新」は森見ワールドよりはるかにぶっ飛んでいる。
ぶっ飛んでるくせに破綻を見せないストーリー展開。
参りました。
えっと、この本にも「解説」が載ってます。
その解説は必読です。
それを読めば、この本の「奇跡」に気づきます。
その奇跡のおかげで、幸せな気持ちになれます。是非!
『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』 岸田奈美著
岸田奈美さんの初著書です。
とはいっても僕の周りに彼女のことを知っている人はおそらく誰もいない。
僕だって、なにがきっかけで彼女を知ったのか今となってはさっぱり覚えちゃいない。
だって彼女の描くエッセイが面白いものばかりで、どの話がきっかけになったのかなんてさっぱりわからない。
で、今回の本は基本全て、note等で読んだことのあるものです。
でもね、何回読んでも面白いし、泣けちゃうし。
正直彼女の(文章の)ファンだから、もちろん多少の贔屓目は入っているよ。
さて、ウェブ上で彼女が書いたエッセイは、横書きです。
だけどこの本は縦書きです。
同じものを横に読むか、縦に読むかで違いがかなりあることに今更気づかされました。
縦の方がいいなあ。
読んでる感が溢れてくる。
だから買って良かったなあと思っています。
お父さんのこと、お母さんのこと、そして弟のこと。
そして岸田奈美本人のこと。
本人曰く「100文字で足りること、2000文字で書く」彼女らしい表現力と言葉の数で訴えてくる。そしてそれが心地よいのだ。
さて本の終わりの方に載っているが、彼女のお母さんが話した言葉
『人を大切にできるのは、人から大切にされた人だけやねんな』
これ、結構響いた。
自分は子供を大切にしてきただろうか?
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