bookreview #3 推し、燃ゆ他 9冊まとめてどん!

前回のbookreviewを書いたのが2月の初旬でした。

それからもかなり(僕にしてはハイペースで)読んでまして、9冊読了しています。この時点で今年13冊読了。100は厳しいけれど50は見えてきたかな。だけど自宅ではほとんど読まないというより読めない身体になってしまっていて、それだけカフェ等に入り浸っているということでしょうか(笑)

それでは9冊まとめて簡単なレビューをば。

とは言え、レビューというよりもその本を選んだきっかけを書くのが多くなるかも。以前にも書いたけれど、どちらかというと偏食傾向の強かった本選び。いろいろなものを読んでみようという気持ちが強くなってきたからこその読書量の増加ともいえるので、手にしたきっかけがなにげに大きいわけです。正直本の内容に触れるというのもどうかと思うしね。

 

Contents

1冊目 芦沢 央著 「許されようとは思いません」

芦沢さんの本はこれで3冊目になります。

「罪の余白」、「悪いものが、来ませんように」ときて、これが3冊目。

過去2冊と違い今回は5編からなる短編集です。その2冊で見事に作者に騙されてしまった僕は、今度は騙されないぞと意気込んで読み始めた。

しかし、最初のお話しから唸らされてしまう。

成績の冴えない営業マンがまったく身に覚えのない実績を上げたとして表彰されてしまうのだが、それはとんでもないケアレスミスが原因だった。小心からなんとかごまかそうと動き始めたところからどんどん悪いほうへ転がっていく様をこう、オチを付けますか!となってしまう第1話。

ただ5編すべてが騙されるお話しではない。

「悪いものが、来ませんように」もそうだったが、血縁関係にある者たちの、怖いストーリーを描くのが本当に上手な人だなあと思うのだ。そう、背中が少し寒くなります。

 

 

2冊目 誉田哲也著 「ドンナ ビアンカ」

姫川玲子シリーズやジウシリーズを愛読してきました。

姫川玲子シリーズでもちょこちょこある、犯人が自らの心情を展開の中に織り込んでいくストーリー展開。だから犯人捜しを楽しむようなものではない。この類の肝は、描かれる人間関係の濃密さだと思うのですが(偉そうで申し訳ない)、本作はコンビを組む警察官二人の関係性が少し弱いかなあと思う。それはたぶん、姫川玲子や東 弘樹のような強い個性を持った警察官ではないことも要因かなあ。

ただ、後ほど触れる姫川玲子シリーズの最新作で、これを読んでたことで若干つながる部分があったことはまあまあでしょうか。

 

3冊目 原田マハ著 「あなたは、誰かの大切な人」

初めての、原田マハさんでした。

1月だったか、2月だったか、近所のスーパーで古本市がありました。正直僕は古本を積極的に買い求めるタイプではないのだけど、以前にも書いたように現在読むことにフラットな気持ちで対峙できているんで、もしかしていい出会いがあるんじゃないかと覗いてみた。とある古本屋さんのワゴンを覗いた時、真っ先に目に入ってきたのは、僕が生涯読んできた本の中で間違いなく5本の指に入る福永武彦の「草の花」だった。予備校生だった頃に読んだ1冊。ずいぶん昔に手放してしまったのだが、思わぬところでの再会だった。非常にきれいな本だったので買い戻すことも考えたが、いやいや新しい出会いを求めてきたんだと本を元に戻した。しかし「草の花」を扱っているお店なら、感覚が合うんじゃないだろうかとワゴンの中の本を探したところにあったのが本作でした。

原田マハという名前だけはかろうじて知っていたけれど、どういう本を書く人かは全く知りませんでした。ただ「読んでみようかなあ」という気持ちが湧いてそれに従って買い求めた本でした。だからきっかけは「草の花」なんだよなあ。

さて本書は6編の短編からなっています。

初めて読む作家さんの場合、短編集からのほうがすっと入っていきやすい面がある。あ、合わないと思ったら放り出すのも簡単だし、逆に今度は長編を読んでみようかと思うことも多い。

キュレーターをされていた経歴からも、違う作品を手にしたいと思えた作家さんですね。

 

4冊目 高田郁著 「あきない世傳金と銀 第十巻」

2月と8月は高田郁さんの新作が出ます。

楽しみで仕方がなかった『みをつくし料理帖』と違い、なんかここ最近は惰性で読んでる感が強かった本シリーズでしたが、今回はなぜか楽しかったなあ。

物語の展開としてはどちらかというと平和な1冊でしたね。死も、裏切りもなくて。だから楽しめたのではなくて、読書の偏食を止めたからだと思う。今回改めて、高田さんの使う言葉が日本語の美しさを教えてくれるなあと感じながら読めたのがこの本を読んで一番良かったと思えた点でしょうか。

物語的にはそろそろ終盤戦かなあと思いつつ、まだまだ波乱も作ってきそうな作家さんでもあるので間違いなく8月に出るであろう新作が待たれます。

 

5冊目 宇佐美りん著 「推し、燃ゆ」

第164回芥川賞受賞作品です。

実は、芥川賞の受賞作品を読むのは初めてかもしれない。いわゆる純文学が苦手なので。

ただ本作は、手にしたのは芥川賞を受賞してからですが、その前段階で読んでみようと思っていた作品だったので、僕の中ではそれほど純文学に対するアレルギーのようなものを感じないままに読め始めることができました。

正直、今も本作に対してなんだか消化しきれないままでいる。『推し』という存在に無縁で生きてきた僕にとってなかなか理解しづらい面もある一方、一番理解できないのは主人公あかりの親。推しがいることで自分の存在を肯定できて、生きてゆくことができる娘。いわゆる発達障害にくくられるであろう、子になぜにそこまで冷たくできるん?という思いが後半に差し掛かるにつれて大きくなってしまう。もちろん身近にいるからこそ、歯がゆさを子に感じることはあるだろう。だけどねえ。爽快感ではなく、このもやもやって感じさせるのが芥川賞なんでしょうか(笑)

 

6冊目 綿矢りさ著 「手のひらの京」

先ほどの、「推し、燃ゆ」を書かれた宇佐美りんさんは、綿矢りさ・金原ひとみに次ぐ歴代3番目の若さだったそうですが、本作はその綿矢りさ作です。彼女が芥川賞を受賞した際は、同時受賞だった金原ひとみさんとともにかなりセンセーショナルに取り上げられていたと記憶している。

芥川賞つながりで本作を手にしたわけではなくて、この本を買った場所は京都にある映画館出町座の書籍販売コーナー。35年ほど前に作られた『夢みるように眠りたい』という映画が、再び上映されることとなり、昨年から全国を巡回上映しているのですが、大阪では「シネ・ヌーヴォー」そして京都は「出町座」。

わざわざ京都に行って映画を見て、映画を見た後に書籍コーナーで京都を舞台とする本作が売られていて、たまたまそれを手にしたらそれが綿矢りさだったという流れですね。そしてここまでの流れ同様、初めての綿矢りさ作品です。

親も、そのまた親も京都。そんな家庭に育った三姉妹。その三女だけが一度は京都を出ないといけない。そんな思いに駆られている…そこがお話しの根っこなのだが、その根っこは掘り返すのが大変なほど太いわけでも絡まっているわけでもないので、どちらかというとストーリーは三姉妹のそれぞれの日常が中心に述べられていくだけだ。京都を舞台に淡々と京都人の生活が綴られて行くだけのお話。要はそんなお話が好きならばおすすめ。僕は?好きだなあ(笑)

 

7冊目 青山美智子著 「お探し物は図書室まで」

 

この本を選んだのは僕ではない。

手にした経緯については下記の記事を読んでほしい。

今年は初めて誕生日プレゼントをリクエストしてみた
今週の月曜日は54回目の誕生日でした。 少し前に、家族から何か欲しいものがあるかと聞かれた。 そりゃお金に糸目をつけなければたくさんある。 欲しいものリストの充実度を見せてあげたいぐらいだ(笑) ただ、そこはもう大人だから。 『い...

 

この本は実に面白かった。

町のコミュニティスペースにある、図書室。図書館ではない図書室だ。だけど司書さんもいる図書室。仕事に、夢に、そして人生に悩んだ人がふとしたきっかけで訪れた図書室。そこにいる異様な存在感を持つ司書の小町さゆりさんに本を探してもらうのだが、必ず1冊見当違いに思える本が紛れている。だけどその1冊が…

後味が悪いことは一切ないし、本の楽しさを改めて教えてくれる一冊だし、これが本屋大賞に選ばれてほしかったなあ。ちなみに僕はこの本がきっかけで『ぐりとぐら』を買いました。

 

8冊目 誉田哲也著 「オムニバス」

2冊目の誉田哲也。この新刊が出るのがわかっていたらきっと、「ドンナ ビアンカ」は買ってなかった。

さて、姫川玲子シリーズの最新刊になります。本当は、前作『ノーマンズランド』からの続きのような重厚な物語を読みたかった。実際にはAmazonで無料で読めた物を含めた短編集だったのがとても残念だった。ひとつめでいきなり、ガンテツこと勝俣とのやり取りに期待してしまっただけに余計に残念さが強くなってしまった。

新生姫川班の新しい3人のメンバーから見た姫川玲子。そんな短編が全部で4編、あとそれと別に3篇、合計7編の短編集。それなりに面白いんだけど、前作が良かっただけに物足りなさを感じてしまう。ただ、「赤い靴」「青い腕」のこの2本の流れは秀逸です。

メンバーから見た姫川玲子、この流れで行くなら今の菊田から見た玲子を描いたものが見たいし、菊田に対峙する玲子が見たい。あ、そこに検事の武見が絡んでくるとなお面白いかも。

 

9冊目 萩原浩著 「海の見える理髪店」

これまた初めて読む作家さんです。

なんで手にしたのか?明確な理由が思い出せない…

本屋大賞絡み?そう思って検索してみるも違った。ただ直木賞受賞作品なんですね。

たぶん、お気に入りの本屋さんでまとめ買いした際に、平積みにされていた作品から選んだと思うんだよねえ。

それほどに予備知識がないままに読み始めました。これも短編集です。

海の見える理髪店をベースにした連作短編集を想像していましたが、違いました。全く違うお話が全部で6篇入っています。

読了後に、直木賞受賞作として認識しましたが、ふ~んそうなんだというのが正直な感想。表題作よりも、母親と娘の冷たい空気をまとった緊張感が楽しめる「いつか来た道」や最愛のひとり娘を事故で失った後の夫婦のやりきれなさとそれでも前を向こうとする「成人式」の2本がとても印象的でした。

いま、萩原浩さんの別の本を読んでいるんですが、それもその2編があったから再び手にしたといっても過言ではない。

 

偶然だけど、そこがまた楽しいのが読書だ

 

今年に入ってから、Notionを使うようになって、その中に読書記録を書き込んでいる。読了した日やちょっとした感想を書いているのだが。本を読んでいる時にふと記憶にとどめておきたいことなどはiPhoneのメモに書き込んでいるんだけれど、今回紹介した本の中で2冊、ともに77ページが好きという記述があって驚いた。

原田マハ「あなたは、誰かの大切な人」より

ねえ、マナミ。人生って、悪いもんじゃないわよ。,

神様は、ちゃんと、ひとりにひとつずつ、幸せを割り当ててくださっている。

誰かにとっては、それはお金かもしれない。別の誰かにとっては、仕事で成功することかもしれない。

でもね、いちばんの幸せは、家族でも、恋人でも、友だちでも、自分が好きな人と一緒に過ごす、ってことじゃないかしら。

大好きな人と、食卓で向かい合って、おいしい食事をともにする。

笑ってしまうほど単純で、かけがえのない、ささやかなこと。それこそが、ほんとうは、何にも勝る幸せなんだって思わない?

 

青山美智子「お探し物は図書室まで」

「いつかって言っている間は、夢は終わらないよ。美しい夢のまま、ずっと続く。かなわなくても、それもひとつの生き方だと私は思う。無計画な夢を抱くのも、悪いことじゃない。日々を楽しくしてくれるからね。」

 

偶然にも77ページに好きな場面や言葉が紡がれていた。もしかして他の7冊にも?そう思って77ページをそれぞれに開いてみたけれど、さすがにそこまでの偶然はない。

実はこの後もすでに2冊読了しているんだけど、そのうちの1冊はまだ消化しきれていないなあ。

消化不良にならないように、レビューで吐き出したいとは思っている。

 

 

 

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