山に行く予定だった。
パッキングも済ませ、この日は電車DE登山だったから、時刻表を何度も確認した。
目覚ましをセットした時間から1時間も早く目が覚めたのも、いつものことだから気にしなかった。
いつだってそうだ。
「○○時に起きなきゃいけない」
そういう時は眠りは浅いし、自然と早く目が覚めてしまうのだ。
予定よりも少し早く家を出て、駅でゆっくり朝ご飯を食べればいい。
それぐらいの早起きだった。
しかし、
どうも腹の具合が良くなかった。
正確には、前日からの胃もたれが治っていなかった。
とりあえず薬を飲んで様子を見てみる。
布団をしっかり被って、体を温める。
決して二度寝をしてはならない。
それだけは注意しなくちゃいけない。
だがいっこうに快方に向かう気配がない。
快方に向かわなくても悪化しなければいい。
そう、これ以上悪くならない限り、山には行ける。
そんなレベルだ。
にもかかわらず僕は布団を出る決断ができなかった。
それは今日の予報が気になっていたからだ。
『風が強く吹くだろう』
行こうと思っていた山は、稜線をたっぷりと歩くコースだった。
このまま快方に向かわず、稜線で風に体温を奪われたらどうしよう。
そう思うと、僕は布団から出れなくなった。
そして時間だけは確実に過ぎていくわけで…
それから約2時間後、僕は京都にいた。
街中なら、多少体が冷えても安心だから。
紅葉にはまだ早い、南禅寺そして永観堂。
風は確かに冷たかった。
しかしそれ以上に、日差しは暖かく、身体が冷えるなんてことはなかった。
きっと登ることはできたはず。
そんな思いを抱えたまま、僕は京都にいた。
■撮影機材
camera :FUJIFILM XQ1、X-E2+XF35mmF2
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